2022/11/29 16:29

■ 2009年 陶芸エッセイ 「前略 行雲より」 ■

 

 

 2009年12月27日(日)

桃山に思う。

 

前略 行雲より。

 

いよいよ年末も押し迫り、2009年も残すところあと4日になってしまった。

あっという間に一年が過ぎていくが、皆さんは新年に向かって目標を立てただろうか。

仕事で成功する、資格を取る、趣味を極めるなど、

具体的な目標を立てて、それに向かって邁進しよう。

「努力は決して裏切らない。」

2010年を充実した年にするために。

 

 

さて、今回の写真はこれだ。

TBSドラマ「JIN 仁」の宣伝広告である。

 

たまたま、やきものの下地用の古新聞に掲載されていたので、

かなり汚れているが、皆さんはこのドラマを見たであろうか。

 

最終回の視聴率が25パーセント超え。

月9ドラマも真っ青の数字をはじき出した。

 

ドラマは大沢たかお演じる主人公の脳外科医 南方仁が

現代から江戸時代にタイムスリップして幕末の人達を救っていくという内容だ。

 

番組放送前から結構宣伝していたので、初回から見続けていたが、

ストーリーの面白さと出演者の名演技にすっかりとハマッてしまった。

 

ここで見ていない方のためにあらすじをひとつ。

 

主人公の脳外科医 南方仁は恋人である未来(中谷美紀)の脳腫瘍の手術を

するが、結果として植物人間にしてしまう。

苦悩の末、うだつのあがらない医者になってしまった彼が、

ひょんなことから江戸時代にタイムスリップして、医者としての使命感を取り戻していく。

 

コレラを治すためペニシリンを作ったり、医療設備のない中で手術を決行したりと

現代と過去の違いを痛切に感じさせる。

 

また、坂本龍馬(内野聖陽)、咲(綾瀬はるか)などの熱演も光る。

 

そして、最終回。

江戸時代の花魁で恋人未来と瓜二つの野風(中谷美紀)の乳がんが見つかる。

仁は手術ができるのか。

できたとしても手術は成功するのか。

かつて恋人の手術を失敗した彼が、過去の自分と決別し新たな自分を取り戻せるのか。

そして、感動のラストシーンへ・・・。

 

初回の謎解きは未解決のまま終ってしまったので、間違いなく続編がありそうだ。

何でも原作の方は漫画で、いまだに連載しているらしい。

この原作が終っていないのに、ドラマを終らせる訳にはいかないのだろう。

何にしても楽しみな番組が一つ増えたわけだ。

今後の続編、また映画化の話も出ているらしいので期待したい。

 

 

さて、江戸時代といえばやきもの隆盛の時代だ。

江戸時代の少し前、織田信長や豊臣秀吉が天下を争った安土桃山時代には、

今でも美術館などで保管されている「桃山陶」と呼ばれるやきものが盛んに焼かれていた。

 

当時は戦国乱世の時代。

明日には命を落とすかもしれない戦国武将たちは、

日々動じない精神を養うため茶道をたしなみ、

そこで使う茶道具を作らせ収集していった。

 

この頃作られた「桃山陶」を目標にして、現在製作している陶工の方たちも多い。

また、桃山陶には全く興味を示さない陶工たちも多い。

 

ここら辺はそれぞれ作り手の好みの問題で、賛否両論分かれるところだ。

 

ちなみに、私は桃山のやきものは好きだが、それに追い付こうとは全く思わない。

現代にある材料、窯、作り方を駆使すれば、当時とは違うものができるはずで、

その時代に合ったやきものを作ることが最善の方法であると思っている。

 

確かに桃山陶は目で確認できる品が残っているので、

目標としてとらえやすいとは思えるが、

「創造する」という観点からは少しかけ離れているように感じてならない。

 

「芸術は爆発だー。」の岡本太郎氏だったら、きっとこう言うだろうな~。

「感じるままに作るんだよ。自分の中から出てくる勢いを作品に現すんだ。」って。

 

陶工として、しばし反省・・・。

 

 

ぽろろん。

 

 

 

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 2009年12月12日(土)

一瞬の油断。

 

 

前略 行雲より。

本日の熊谷は昨日とは打って変わって快晴のあったか日和。

こんな日は外に出て運動するに限る。

たまには公園で思いっきりサッカーボールなんぞを蹴ってみたいものだ。

 

 

さて、今回の写真はこれ。

ものの見事につぶれてしまったぐい呑みのテストピースである。

 

先日、工房の近所に住んでいる方が畑の土を掘ったところ、

粘土層のようなものがあったのでやきものに使えないかと尋ねてきた。

 

持ってきてもらった土を見たところ、何とか成型できそうな粘り具合がある。

これはもしや使えるかなと思いつつ、とりあえずテストしてみますと返事をし、

ぐい呑みのテストピースを作ってみた。

 

成型は全く問題なし。

練りを充分にしたところ、ロクロでも挽けるほどの滑らかさも出てきた。

素焼きも問題なし。これは使えるかなと一瞬の油断が出た。

 

陶工にとって地元の土を使えるほどの喜びはない。

もし使えるのなら新しい熊谷焼の誕生である。

山の無い熊谷で土が取れるなんて・・・。

 

この油断がミスにつながる。

 

通常、全く初めての土を焼く場合は土つぶれを防ぐため、

道具土などで作った焼台の上に乗せて、テストピースがつぶれてもいいように焼くのだが、

今回は棚板の上に直接乗せて焼いてしまった。

 

結果はご覧の通り。

1250度の炎に耐え切れず原型が全くわからないほどのつぶれようである。

ある意味、釉薬に使えるほどの溶け具合だ。

 

焼台の上に乗せておけば、そのまま台ごと捨ててしまえばハイ終了なのだが、

棚板に直接置いた土はベタッと板にくっついてしまう。

ハンマーとたがねで叩きながら剥がしてみたが、あまりのぶ厚さにびくともしない。

しばらく棚板のこの部分は使えそうにない。残念。

 

さて、問題はこの土だが、1250度に耐えられないからといって

やきものに使えないかと言うとそんな事はない。

もしかしたら、1200度で見事な発色をするかもしれないし、

1180度の酸化焼成あたりで焼けばきれいに焼きあがるかもしれない。

 

土にはそれぞれの特徴があり、

理想の温度帯というのはいろいろテストしてみないとわからないものだ。

 

市販の土に慣れてしまうと、やきものに使う土は1200度~1280度位で焼けるのが

普通だと思い込んでしまうが、ここら辺のところは常に柔軟な発想を持ちたい。

 

別に900度だっていいじゃん。

1100度で焼いて何が悪いと開き直っていいのである。

 

たた、問題は使う釉薬の溶ける温度帯である。

市販の釉薬はだいだい1200度以上の温度で溶けるように作られている。

この釉薬を掘ってきた土に掛けて

1100度で焼成をストップしても釉薬は溶けきらない。

 

この場合は釉薬にフリットを入れたり、

楽焼用の早く溶ける釉薬を使うなりして調節しなければならない。

 

土と釉薬の相性を良く考えて焼くのがベターだということだ。

 

さて、この土。いったい何度で焼けば一番いい発色なのか興味のある所だが、

今回は土を使い切ってしまったので、また時期をみてチャレンジしてみたい。

 

土を変えるのは、作陶のモチベーションを高める一番の方法だから。

 

 

ぽろろん。

 

 

 

 

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2009年11月27日(金)

光と空気の表現者。

 

前略 行雲より。

本日の熊谷は快晴のあたたか天気。

庭のもみじもそろそろ紅葉が本格化してきた。

窯場の屋根に落葉がどっさりと積もるんですが、これもまた季節の風物詩。

お気に入りの歌でも口ずさみながら、竹ぼうきでよいしょっと履けばいいんです。

 

 

さて、今回の写真はこれだ。

西洋絵画の巨匠モネの「印象 日の出」である。

 

モネというのは19~20世紀にフランスで活躍した画家で、

本名をクロード・オスカル・モネ。

その彼の出世作といわれているのがこの絵だ。

 

港街から見える日の出の神秘的な風景。

心静かにその時をじっと見つめて

キャンパスに筆を落とすモネの姿が目に浮かんでくる。

 

この絵をモネは「印象」と名付け、1874年、仲間と共に個展にて発表。

ここから「印象派」という言葉が生まれることになる。

 

モネは少年時代、風刺画を描いて小遣いを稼いでいたのだが、

ある日一人の無名画家ブーダンと出会う。

ブーダンはモネの非凡な才能に目を留め、風刺画ではなく、風景画を描くことを強く勧めた。

その後、モネの才能は一気に開花していく。

 

まさに相田みつを氏の名言、「そのときの出逢いが 人生を根底から変えることがある」と。

 

その後モネはパリで本格的に絵画を学び、美術史に残る仲間たちと出会う。

マネ、シスレー、ルノワールの面々達だ。

やがてこの仲間達と「印象派」展を開き、現在の名声を得ている。

 

以上がモネの略歴だが、ここで個人的に私の好きなモネの絵を紹介したい。

 

まずはこれだ。

「サン・ラザール駅」

汽車の吐く白い煙や水蒸気に光が反射し、

何とも言えない幻想的な風景が描かれている。

印象派の特長として、光と空気を巧みに表現している感があるが、

まさにその代表作と言えるような気がする。

 

 

お次はこれ。

「ラ・ジャポネーズ」

当時はジャポニズムと呼ばれる日本趣味がヨーロッパで流行していた。

浮世絵や着物、ござ、団扇など、日本でお馴染みの小道具をふんだんに使い、

ややおちゃめな活気ある作品になっている。

ちなみにモネ自信は後年、

この作品の舞台設定や衣装などを悔いているらしいが、いやいやなんの。

これはこれで面白みのある立派な作品です。

 

 

 

そして何といっても、私の一番好きな作品がこれだ。

「日傘をさす女性」

バックに流れる青い空、風になびく白い服、

太陽から降り注ぐ陽光などがものの見事に表現されている。

人物画でありながら、顔は表現されていない。

そのため風景の印象が強く残り、人と自然が見事に調和されている。

写真でしかお見せできないのが残念だ。

興味のある人はぜひ画集を手に入れて見て欲しい。

 

今回はこれら4点を紹介したが、

まだまだモネの素敵な作品は限りなくある。

有名どころでは「睡蓮」「アルジャントゥイユのひなげし」などなど。

機会があればまた紹介してみたい。

 

 

いや~しかしすごいですね。

やきものにはない表現力。絵画ならではといったところだろうか。

ここまで紹介しているとガゼン作品への製作意欲わいてきますね。

いっちょ大皿挽いて、「絵画」描きますか。

 

おっと最後に忘れずにもう一度。

「そのときの出逢いが 人生を根底から変えることがある よき出逢いを」

 

 

ぽろろん。

 

 

 

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2009年11月14日(土)

四角いおもちゃ。

 

前略 行雲より。

本日の熊谷は雨上がり。

午前中は大雨だったが、午後からはうっすらと日が差すことも。

 

いよいよ秋も終り、冬、年末へと向かっていく。

一年が経つのは早いものだ。

ついこのあいだ年が明けたと思ったら、もう終りへと近づいている。

残り少ない2009年だが、悔いのない年へと締めくくりたいものだ。

 

 

さて、今回の写真はこれだ。

かつて大ブームを巻き起こしたルービックキューブである。

 

このキューブ。最近ちょこちょこテレビで見るようになったので、

どんなもんかと思って手に入れてみた。

 

大きさも手の平サイズ。軽さも適度。何と言っても回した時の感触がいい。

ちょっとした空き時間をつぶすのに最適なのである。

 

利用頻度が一番多いのはパソコン作業の時。

起動させる時や計算処理をさせている時など、

パソコン仕事でのちょっとした待ち時間というのは案外多いものだ。

 

そんな時は大抵お気に入りの雑誌などを読んで時間をつぶすのだが、

雑誌を読み尽くした時はこのキューブが重宝する。

 

くるっくるっと各所を回しながら色を揃えていくと、5分や10分などは

あっと言う間に過ぎてしまう。

 

6面揃えるのが目標なのだが、なかなかうまくはいかない。

1面は楽勝。これは何となく回してれば誰でも揃えられる。

 

ところが、「完全1面」というのをご存知だろうか。

写真のように一番上の面を全部同じ色に揃えて、

接している4面の上一列目を各色で統一する。

これを「完全1面」と言うのだそうだ。

 

6面揃えるのはまずこの完全1面をクリアせよとのこと。

 

で、この完全1面てのが、「ちょい難しい」程度で意外とできてしまうところが面白い。

単純に1面揃えるより複雑で、2面揃えるよりは簡単と言う、

それこそちょっとした空き時間に最適な遊び方なのだ。

 

たまにテレビ見てると、恐ろしく早いスピードで6面揃えちゃってるんですよね。

 

ウチも一度は6面を揃えてみたいもんですが、

今のところはこの完全1面を作っては崩し、作っては崩しの繰り返しで満足してます。

 

 

さて、このキューブから連想される陶芸作品と言えば、立方体の形をした

陶ランプといったところだろうか。

 

製作はたたらで。新聞紙やダンボールで型を作り、そこにたたらを貼り合わせていく。

少し乾かしてから、針で各所にお好みの穴を開け光の通り道にする。

 

型にした新聞紙はそのまま焼いちゃいましょう。

おっと、キャンドルを入れる大きめの穴も忘れずに・・・。

 

 

ぽろろん。

 

 

 

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2009年10月31日(土)

全ては自分で決めたこと。

 

前略 行雲より。

季節はすっかり秋色真っ只中で、雨天の冷え込みはだいぶ厳しくなってきた。

先日の雨の日はあまりの寒さにストーブに点火。

この時期にストーブかよと・・・。

寒暖の差に気をつけながら、体調管理に注意する毎日である。

 

 

 さて、今回の写真はこれだ。

季節はずれのトマトの実である。

 

もうトマトはとっくに旬を過ぎているのだが、ウチの菜園ではまだ何とか実が生っている。

 

生っているからには収穫しなければいけないが、これをどうしましょうと。

何と言っても一番おいしい時に収穫したいではないか。

 

ただ難点がひとつ。

ウチの菜園は完全無農薬なので虫の被害がある。

例えばトマトなんぞは真っ赤に熟すまで収穫を我慢したいところだが、

人間が見て食べたいと思う頃は、虫たちにも絶好の食べ物となる。

 

もうちょっとで真っ赤になると言うところを狙って虫が皮の表面をかじる。

どうせならもっと食ってくれよと言いたい位、

中途半端な食べ方をするのでそこがまた許せないところだ。

そんなこんなで、ウチでは虫にやられる前に収穫している。

 

ではいつ収穫すればいいのか。

 

まずトマトは花が咲き、実が出来るのだが、最初は上記の写真のように緑色をしている。

 この緑のトマトが、ある日突然写真のように赤身を帯びてくる。

このまま放っておくと真っ赤に熟すのだが、ウチではこの赤スイッチが入ったら収穫してしまう。

すると虫の被害に会う前にバッチリOKという寸法だ。

 

じゃ緑のうちに収穫するとどうなるか。

今回はこの点を写真を見ながら実験してみよう。

 

 まず、緑色のトマトと赤身を帯びたトマトを収穫する。

写真だとわかりずらいが、右側のトマトは実際に見るといくらか赤くなり始めている。

 

 

 3日後の写真だ。

右側のトマトが赤くなってるのがよくわかる。

左は緑のまま変化なし。

保存方法は台所の片隅に置いたままの状態。

冷蔵庫には入れずに常温で置いておく。

 

 そして、5日後。

右側は真っ赤に熟している。

左は相変わらず変化なし。

このまま永遠に緑のトマトは緑のままだろう。

 

一方、赤トマトの方はここまでくれば丸かじりするも良し、

冷蔵庫で冷やしてから食するも良しの、ちょうど食べ頃と言えるだろう。

 

お味はと言うと・・・。

 

やっぱり実を付けたまま熟したものには勝てない。

色合いは同じように見えても糖度が全然違う感じだ。

ただ、赤いことは赤いのでリコピンの量は同じくらいあるのではないだろうか。

リコピン計が無いので何とも言えないところだが。

 

理想は糖度バッチリのトマトだが、

手作り野菜は無農薬の安心安全が一番のメリットなので仕方の無いところだ。

 

完全無農薬・・・。ここだけは絶対譲れない。

 

さて、この菜園生活も夏場の暑い日や雑草取りの時期には何度辞めようと思ったか数知れない。

しかし、ここで辞めたら笑い者である。

「根性ねえな~。」と自分にも周りにもけなされるだけだ。

 

「継続は力なり。」

続けてさえいればきっといいことがある。

昔からそう自分に言い続けて生きてきた。

 

そんなことをフッと思っていたところ、

先日あるテレビ番組で芸能人の熟年世代が一日先生になり、

若手の人達に想いを説法すると言ったような番組があった。

 

この中でラサール石井氏がおもしろいことを言っていた。

 

何でも彼の予備校時代の先生の言葉らしいが、

「人生は厳しいものではなく、思いっきり甘いものだ。」と。

「何かを一つでも続けてさえいれば、絶対いいことがある。」と。

 

なるほど・・・。

 

人は必ず年を取る。

放っといても今日という日は終り、明日が訪れ、1年などはあっという間に過ぎてしまう。

 

そんな時に自分は何ができるか。

 

時代に流されそのままいくのも良いだろう。

 

しかし何か一つでも続けて、いわゆる「一芸に秀でる」のか。

あるいは何もないまま過ぎ去っていく日々をじっと待つのか。

 

全ては自分の判断に委ねられている。

 

 

ぽろろん。

 

 

 

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2009年10月10日(土)

ちょいとひねりを。

 

前略 行雲より。

 

先日の台風はすごかったですね。

テレビやラジオで頻繁に台風のすごさを放送していたが実感がわかず、

まぁ何とかなるでしょうなんてタカを括っていたのも束の間。

当日の九州地方の台風直撃映像を見てびっくり仰天。

体育館のような建物の屋根が半分以上吹っ飛んでました。

 

こりゃ大変だとばかり、深夜12時位から物干し竿を降ろしたり、

飛んでいきそうなものを縛ったりで、そんなことは早くやれよ~ってな話。

 

結果、過ぎてしまえば何てことなかったが、

備えあれば憂いなしをしみじみと感じた一日だった。

 

 

さて、今回の写真はこれ。

サンプル用に作った焼締めの片口である。

 

読者の方で趣味で陶芸をやられる方もいると思うが、

電動ロクロをある程度廻せるようになったら、ぜひ作ってみてほしい。

 

ロクロを挽いてハイ終りではなく、切ったり、ひねったり、

指先や道具を使って造形に変化を与えるのも面白いものだ。

 

もちろん初心者のうちは同心円で挽くことができないので、

まずはきっちり作るのが重要だが、そればっかり作っていたのでは飽きも来るし、

そもそも芸術としてはいかがなものかとなってしまう。

 

きれいに挽くのも大事だが、

ちょっと失敗した作品などは弓などの道具を使っていろいろな形に切ってみる。

指先ではじいてみる。穴を開けてみる。

そこから何かが生まれるかも知れない。はたまた生まれないかも知れない。

しかし、何もしなければ創造力は生まれてこないので、

とりあえず変化させてみることが大事だ。

 

 

全体的な作り方のコツは、作品を触り過ぎないってこと。

ロクロを素直に挽くのも、挽いた後に変化を加えるのにも共通して言えることだが、

土はなるべく触らない方がいい。

触れば触るほど手跡が残り、だらしない形になってしまうことが多い。

「なるべく触らないように。」と常に自分に言い聞かせて作品作りをしよう。

 

 

さて、それでは定番の形を何点か紹介してみよう。

 

まず、最初に出てきた片口。

小鉢を挽いたら、1箇所指で押し出すだけ。非常にシンプルだ。

ロクロで同心円に挽けなかった作品などは、

この片口にしてしまえばつぶさなくて済む。

 

続いて、三方円。

小鉢を挽いて三方を板などで軽くつぶしてやる。

正三角形気味に作るのがコツだが、微妙にずれていても面白いかも知れない。

 

お次は割山椒。

小鉢を作り、三方を弓で切っていく。

切ったままでもいいし、フチをゆがめてもいい。

汁ものなどは盛りづらいが、デザイン的にはパンチのある作品となる。

 

最後は貝小鉢。

フチを指先で5~7箇所くらい押し出して、余った部分を弓で切り、若干閉じてしまう。

1周全部を指でつまめば花びら型にもなるので、いろいろ応用のできる形だ。

 

以上が定番型。

こういった形を自分のレパートリーに加えて、

そこからいろいろな造形に変化させてみよう。

 

ああでもない。こうでもない。

失敗したら土にもどせばいい。

 

さあ、ロクロの上から創造の世界へ・・・。

 

 

 

ぽろろん。