2022/11/29 17:31

2011年7月31日(日)

余白も大事よ。

 

前略 行雲より。

 

暑い夏も小休止なのか、ここ数日は曇りやら雨やらで

太陽の日差しがきついといった感じが無い。

ただ相変わらず蒸し暑さは続いているので、

エアコン+扇風機を上手に使い、この夏場を乗り切りたいものだ。

 

 

さて、今回の写真はこれだ。

「フェルマーの最終定理」という文庫本である。

 

ノンフィクション科学系の人気本ということで、

思わず手にとって読んでみた。

 

表題から数式満載の感があるが、そんなことはない。

読み始めてから飽きさせずに、ぐいぐいと内容に引き込まれてしまう。

そんな類の本だ。

 

 

ところで、フェルマーの最終定理とはなんぞや。

 

その前に、まず数学界では難問がよく懸賞金に掛けられるらしい。

有名どころではアメリカのクレイ数学研究所で

100万ドルの懸賞金が掛けられた

ミレニアム懸賞問題と呼ばれる7題難問がある。

題名だけ紹介しよう。

P≠NP予想

ホッジ予想

ポアンカレ予想(解決済み)

リーマン予想

ヤンーミルズ方程式と質量ギャップ問題

ナビエーストークス方程式の解の存在と滑らかさ

BSD予想

 

題名を呼んだだけでは、なにがなんだかさっぱりといったところだ。

で、これらの問題の意味をちょっとさらってみるのだが、

読んでいる途中で挫折してしまう。

数学を専門に学んでいる人でないと、

問題文の意味すらわからないことが多いのだ。

 

フェルマーの最終定理も懸賞金が掛けられていたのだが、

上記の7題難問と違って非常にシンプル。

それがこれだ。

 

x^n + y^n = z^n (xのn乗 + yのn乗 = zのn乗)

この方程式はnが2より大きい場合は整数解をもたない。

 

どうだろう。非常にとっつきやすい問題文ではないか。

上記の内容を証明すればいいのだ。

 

この問題を見てあれっと思う人もいるだろう。

そう中学時代に習ったアレである。

 

直角三角形の斜辺をz、その他の辺をx、yとした場合

次の方程式が成り立つ。

x^2 + y^2 = z^2

 

有名なピタゴラスの定理だ。(別名 三平方の定理)

 

フェルマーの最終定理は

この誰もが一度は聞いたことのある定理を少々いじったもので、

わかりやすいというのが人気の理由らしい。

 

で、どうやってこの問題が生まれたのか。

 

1600年代にフランスで生まれたピエール・ド・フェルマーは

裁判所で役人をしていたが、

趣味で数学の問題を作っては解くといったことをして楽しんでいた。

 

そんなフェルマーがある書物に出会う。

「算術」とよばれる書だ。

 

この書のピタゴラスの定理の項を読んでいた彼は、

この数式をいじり始める。

 

x^2 + y^2 = z^2の2乗を3乗にしてみる。

 

おやっ、この式は整数解がないぞっと。

 

で、3乗、4乗と数を増やして試してみる。

ありゃりゃ、これらも整数解が全くないぞっと。

 

そして彼はこの算術の余白に一言記す。

「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、

余白がせますぎるのでここに記すことはできない。」

 

この瞬間、およそ300年以上に渡って

世界中の数学者たちが挑戦しては打ちのめされる難問

「フェルマーの最終定理」が出現したのだ。

 

 

なんともロマンのある話ではないか。

ほんのちょっとしたいたずら心で余白にメモしたのかも知れない。

しかし、そんな出来心がその後の数学界に多大なる貢献をしようとは・・・。

 

その後1994年、数学者アンドリュー・ワイルズによって

この難問はついに証明される。

そのあたりの詳しいいきさつは、ぜひ本書を手にとって読んでみてほしい。

 

 

さあ、我々も手持ちの本の余白に記してみますか。

 

「土を焼かないで陶磁器を作る方法」

「俺はこの方法を知っている。

だが余白がせますぎるので、ここに書くことはできない。」

 

 

ぽろろん。

 

     

 

 

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2011年7月1日(金)

時代遅れの人気者。

 

前略 行雲より。

震災からもうすぐ4ヶ月になろうとしている。

最後にエッセイを更新してからしばらく経つが、いつ再開しようかと考えていた。

原発はいまだに収束していないが、メルマガ発行元より催促のメールが来るようになってきたので、

そろそろ再開してもよいと判断した。

 

「災害は忘れた頃にやってくる」とはよく言う言葉だ。

今回の震災も数百年に一度の大津波を起こし、

東北や北関東に甚大な被害を被ったが、

我々人類は自然に生かされているということをしみじみと感じた震災でもあった。

 

かつての恐竜が地球の王者だったように、21世紀の今、人間がこの地球界に君臨している。

宇宙レベルで見れば頻繁に起こっている原子核反応を、

人類は大気圏の中で簡単に行える術を持ってしまった。

結果、地球上にない核生成物を大量にまき散らしている。

電気はエネルギーとして確かに重要なものだ。

しかし、そのエネルギーを危険な核生成物と引き換えに得てもいいのだろうか。

 

自然に害のない太陽光発電や風力、水力。

原子力に頼らない発電法を今模索する時がきたのではないか。

 

数百年後の地球は、まだ青くて美しいことを願ってやまない。

 

 

さて、今回の写真はこれだ。

扇風機である。

 

これから節電の夏に入ろうとしているが、今この扇風機が飛ぶように売れているらしい。

今さら扇風機なんて、涼しくなる足しになるのだろうかって感じだが、

これが予想外に効果があるようだ。

 

 

先日テレビで、室内にいる人の体感温度を25度にする実験を行っていた。

まずはエアコン単体。こちらは冷房温度を25度に設定する。

 

もうひとつはエアコン+扇風機。

こちらはエアコンの温度を28度に設定し、プラス扇風機を利用する。

 

どちらも人体のそばに温度計をおいて25度になるように調節する。

 

一見するとエアコン+扇風機ってのは、2つも電気製品を使っているから、

非常に電力を使いそうに感じる。

しかし、部屋の室温を28度から25度に下げるのは相当な電力を使うらしい。

 

正確な数字は覚えていないが、

室温を3度下げるのに必要なエアコン電力の

およそ数分の1位の電力量で、プラス扇風機の勝利となった。

 

筆者ももちろん、エアコン+扇風機なんて、

なんで無駄なことをしてるのだろうと感じていた者の一人で、

そんな無駄するならエアコンの温度を下げろよってな感覚でいた。

 

ところがどっこいの扇風機。

風を送るだけの時代遅れになりそうなこの品こそが、

節電に大いに貢献する代物だったのだ。

 

どうりで売れる訳だ。

 

普通の置き型扇風機のみならず、

パソコンのUSBにつなげるだけのミニ扇風機なんかも売れているらしい。

     

こちらは自分専用で首振りなんかはできないものが多いが、

USBでまかなえる程度の電力だし、

無いよりはあった方が涼しいらしいので、

パソコン作業のお供にぜひ使いまくってほしい。

 

万一、計画停電になってもノートパソコンのバッテリーを使えば

USB経由で使用できるので、停電時の暑さ対策にもなる。

 

今こそ昭和の時代に帰って、扇風機、うちわ、水バケツに素足突っ込みなど、

ありとあらゆる手段を講じる時なのかも知れない。

 

たかが扇風機、されど扇風機。

 

ぽろろん。

 

 

 

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2011年2月19日(土)

紐作りもいいもんだ。

 

 前略 行雲より。

つい先日、年が明けたと思ったら、もう2月の下旬に入ろうとしている。

大雪の寒さも過ぎて、暖かい日もちらほら出てきた。

本日は風がやや冷たいが、室内にいると外には春の訪れが近づいているかのようだ。

庭の梅も咲いて、紅白の花がきれいに顔を出す。

おっと、花が咲くってことは花粉のシーズンが来たってことだ。

今年は去年の8倍の花粉が舞うらしい。

ん~ん。準備万端にせねば・・・。

 

 

さて、今回の写真はこれだ。

土造形が終了した壺である。

 

最近は壺やら置き物やらの大物を中心に作っている。

こういった大物は紐作りがいい。

ロクロでは出ない無骨感というか、手作りのゴツゴツ具合が微妙な味を醸し出してくれるのだ。

もちろん、電動ロクロのキリッと引き締まった壺もいいのだが、

大昔の陶工が作ったような、1本1本を紐で重ねていく様が好きでしょうがない。

 

こういった紐作りの壺は焼締めに限る。

釉薬は掛けず、土味だけで勝負する。

薪窯で火前に置いて灰をどんどん掛けるのが理想だが、

ガスや灯油窯の還元炎できれいに焼かれた焼締めもいい。

ここら辺は各人の好みの問題だろう。

 

また、素焼きされた壺や大皿などの大物を見ると無性に絵が描きたくなる。

そのまま細工せずに焼いた方がいい場合もあるが、

太めの筆でエイヤッと絵付けしたくなるのだ。

造形も楽しいが、思いのままに描く絵付けもこれまた楽しい。

写実的な絵や抽象画など、気まぐれに筆を走らせると焼き上がりのイメージがどんどん膨らんでいく。

この辺が造形とはまた別の陶芸の魅力かも知れない。

 

さて、この紐作りの大物製作。

作り方のコツは硬くなり始めた土を使うってこと。

水分を多く含んだ土だと土台の成型でつぶれやすいし、

土が手について作りづらいのなんのってもんじゃない。

 

それと一気に作るのではなく、土台部、中間部、

上部といった具合に3~4回に分けて作るといい。

ただ単純に垂直に積み上げていくのなら一気に作れるが、

写真のように高台部からぐっと張り出すように作るには、

土台を作ってからやや乾燥させる時間が必要だ。

そうしないと途中で土がぺったんこにつぶれてしまう。

 

紐を3、4段組んでいって指先でつなぎ目を整え、また積んでいく。

ある程度の高さに積んだら、たたき板でペンペンと土を叩いて、

指跡を消しながら土を締めてやる。

つぶれない程度の高さでやや乾燥させ、次の部分をまた作るといった具合だ。

 

ちなみにこの写真の壺で2回に分けて作っている。

あまり大きくない壺なので、土台部で1回、上部~口作りで1回だ。

 

口作りは作者の個性が出やすいので、今回は唇型にして、ややお茶目感を出してみた。

果たしてどう焼き上がるのか。

今から火入れが楽しみである。

 

 

ぽろろん。