2022/11/29 17:37
■ 2012年 陶芸エッセイ 「前略 行雲より」 ■
2012年11月7日(水)
kindle(キンドル)アプリを使ってみた。
前略 行雲より。
今日の熊谷は昨日とはうって変わって快晴日。
洗濯するには最適な日中になりそうだ。
暦のめくれるのも早くもう11月。来月は年末の12月だ。
毎年1年の月日が短くなっていく気がする。
ついこの間までうだるような暑さだったのに、最近の朝晩の寒いこと。
今のうちに冬仕度を整えて、寒い冬を乗り切りたい。
さて、今回のテーマは、
今、ちまたで流行っている電子書籍kindle(以下、キンドル)の
アプリ版についてのレビューである。
電子書籍って名前は最近のニュースでもよく聞くだろう。
アマゾンのキンドル、楽天のkobo(以下、コボ)、ソニーのリーダーなど、
各社がこの電子本を読める端末をそれぞれ出している。
アメリカではアマゾンのキンドルが有名で、
本家アマゾンのサイトではついに電子本のダウンロード数が
紙の本を抜いてしまったそうだ。
アメリカで起こったことは日本でも十分起こりうるので、
国内メーカーはキンドルが日本で販売される前に
自社製品を普及しようとやっきになっている。
当然だろう。
この電子本ってやつは持っている端末ごとにアクセスサイトが違うので、
キンドルを使うとアマゾンのサイト以外から本を購入できない。
楽天のコボなら、楽天ブックス以外からは本を落とせないのだ。
てことはハードを普及させてしまえば勝ちって訳で、
ある意味コアな電子本ユーザーには端末を無料で普及してもいいくらいだろう。
さて、筆者は根っからのアマゾン派なので、
専用端末を持つのならキンドルってことになる。
今日現在アマゾンでキンドルを予約すると、
来年の1月6日に発送されるそうだ。いやはやたいした人気商品である。
ちなみに、kindle paperwhite3G(以下、キンドル3G)なんてやつは、
ドコモの回線を無料で使用し、電子本を探したりダウンロードできてしまうすぐれもの。
インターネットに繋がる環境が無くても電話回線がつながればいいのだから、
通勤途中や旅行先、もちろん自宅なんかでも、いつでもどこでも電子本が落とせるという、
本好きにはたまらない端末になっている。
で、この電子本が普及するともうひとつのメリットがある。
それは、誰でも本を書いて売ることができる時代になるってこと。
自分の今までの体験や知識を文字にして電子本として発行し、
自分の好きな金額で本を出版できる時代がもう来ている。
今現在でもコアなサイトでは情報本が売られてはいるが、
高価だったり、入金が面倒だったりする。
それがキンドルやコボが普及し、
アマゾンや楽天ブックスなんかに扱ってもらえれば、
1クリックでそれらの本を購入できるので、
発行部数は天と地ほどの差が出る。
電子本登場前まで本を世に出すには、出版社を通じて出したり、
高額なお金を使って自費出版するなどの方法しかなかった。
おまけに一冊の本にするには原稿用紙で数百枚の文章を書かねばならず、
それがネックで断念した人も多いだろう。
ところが原稿用紙たった数枚程度の情報でも欲しい人には欲しい訳で、
そういった細切れの情報ほど電子本向きになる。
例えば、何十年も同じ仕事をしてきた人はその仕事のコツなんかを知っている。
大工さんならカンナやノコギリのひき方。カナヅチを打つコツ。
店員さんなら接客のコツ。
タクシードライバーなら近道、抜け道など。
こういった情報は量的にはたいした量ではないが、
電子本10ページ100円とかで十分商品になるのである。
さて、この無限の可能性を秘めている電子本だが、
今回はキンドルやコボなどの専用端末ではなく、
普通のタブレットPCを使ってレビューしてみよう。
筆者が使っているアンドロイドの5インチタブレットPCで、
まずはgoogleプレイストアにアクセスする。
で、「kindle」を検索。
するとkindleアプリが出てくる。
これをダウンロードしてインストール。
するとタブレット端末でアマゾンのキンドルストアにアクセスでき、
お好きな電子本をダウンロードできるようになる。
とりあえず今回は無料版の漫画「テルマエ・ロマエ」と
エッセイ「うまい豆腐の話」を落としてみた。
さて使用感だ。
まずは漫画から見てみよう。
落としたのが5インチタブレットなのでマンガは少々読みづらい。
はっきり言って小さ過ぎで文字がよく見えない。
試しに7インチタブレットにも落としてみたのだが、
7インチに通常表示すると、だいたい紙の漫画の文庫本サイズ程度になる。
これならなんとか読める程度の文字の大きさだ。
もちろん拡大も可能なので、読めなければ大きくして見ればいいのだが、
漫画を大きくするとコマごとに画面を動かさないといけないので、
数ページで読むのが億劫になってくる。
また、漫画は2ページを見開いてみるクセがついているので、
1ページづつ表示されるのが少々面倒に感じてしまう。
やはり漫画については10インチ以上のタブレットで拡大せずに読んだ方がいいだろう。
一方、文字ベースの小説や単行本なんかは5インチタブレットでもOK。
文字の大きさは、拡大や縮小して好みの大きさにできる。
背景色も変えられるし、行間も広くしたりできるので、すっとストーリーに入っていける。
ページめくりも快調。指1本でさらっと次ページへいける。
ただ、こういったタブレットPCは専用の読書端末ではないので、
連続して長時間読むとどうしても目が疲れる。
ちょっとした待ち時間にさらっと読むのがベターな使い方だろう。
もちろんじっくり読みたい人はキンドル3Gなんかの専用端末を使えば目にもやさしいし、
単行本や漫画、小説など、いろんな本を数十~数百冊分持ち運べるので、
その時の気分で好きな本が読める。
通勤時や旅先に数冊の本を持っていくのは面倒だが、電子本ならそれも可能。
いろんな可能性があるこの電子本が早く日本でも普及して、
出版不況なんぞ吹っ飛ばしてほしいものだ。
最後に、スマホにもこのkindleアプリはあるので、
興味のある人はぜひインストールして使ってみて欲しい。
いやー、なかなかあなどれませんぞ。キンドル軍団。
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2012年8月25日(土)
暑い日にはこれが一番。
前略 行雲より。
本日の熊谷はいつも通りの猛暑日。
日中は外にはいられないほどの暑さだ。
朝方に近所の公園を経由してきたが、少年サッカーの大会をやっていた。
駐車場やグランド外に陣取る人の数がものすごい。
応援する父兄も選手本人もこの暑さでは大変だろう。
しかし、そんな暑さなど忘れたかのように、必死にボールに喰らいついていく子供たち。
この中から、明日のJリーガーが生まれてくるのだろうか。
サッカー少年だったころの自分を思い出して、しばし観戦してしまった。
ロンドンには無い、もうひとつのオリンピックがここにある。
さて今回の写真はこれだ。
サンプルで使うロクロ上がりのやきものたちである
左はピッチャーの原型。
やや乾いてきたら口や取っ手を付けて完成形までもっていく。
右の2つは花入れの変化形。
一番右のとっくりを作ってから、
とっくりの口の部分をつぼめてしまう。
すると、真中の砲弾型の作品ができる。
あとは好きな所に穴をあければ、花入れの完成である。
側面全体にすかし模様を入れて、陶ランプにしてもいい。
いろんな形に応用できるのである。
お盆が終ってから満足にロクロを廻してなかったので、
久々のロクロ作業が楽しい。
外はうだるような暑さだが、エアコンを効かした室内で
やや冷たいバケツの水をすくって土にかける。
右足でロクロのペダルを回転させて気の向くままに造形する。
いや~最高ですね。集中力マックス。
毎日やきもの作ってると飽きる時もあるのだが、
久々にやるとほんとに楽しい。
陶芸やってて良かった~と感慨に浸ってしまう。
で、完成した作品を眺めながら、しばしボーっとしてみる。
植木職人さんが作業後にタバコを一服しながら植木を眺めている心境だ。
無我の境地。至福のひと時である。
ところで、もの作りの趣味っていうと陶芸以外にはプラモデルなんかがある。
このプラモデルは設計図通りに作る良さが売りだろう。
一方、陶芸は設計図なしに感じたままを作品にできる良さ。
若い頃は結構プラモも作ったが、
手順通りに作るのがどうも性に合わない年齢になってきたみたいだ。
プラモ作ってると、もっと自由に作らせてくれ、
いちいち作りながら設計図なんか見たくない、
感じたままを表現させてくれとウチなる声に気が付く。
やきもの作りは作ってる途中でいろんな形に変化できるし、
正解なんか無い、感じるままの作業がいい。
(もちろん作品として作る場合の話。
職人として作る場合は、同じものをひたすら作り続けるのが仕事。)
おまけに完成作品は普段使いの食器やら小物になるし、
うまく焼き上がれば芸術品にまで昇華する。
ここら辺はプラモデルには無い、やきものの一番の魅力だろう。
ではプラモ作りのいい所は・・・。
やっぱりやきものには無い精密さだろう。
きっちりとした採寸で飛行機や船を再現するのは、
やきものでは、ほぼ不可能と言っていい。
零戦やら軍艦なんかは、プラモの独壇場だ。
やきものには無い別の魅力がプラモデルにはある。
そんな流れで、つい先日久々に「宇宙戦艦ヤマト」のプラモを作ったが、
パーツの細かさに驚いた。
指先で持てないものもある。ピンセットが必需品だ。
これが目の見える若いうちはいいのだが、
年齢がいくとちょっときつい作業なんですよね。
何とか完成させたが、
やっぱり私的にはやきもの作りの方が性に合ってるようだ。
ここで一句。
盛夏なり 冷水楽しみ 陶芸かな
字余り・・・。
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2012年8月2日(木)
懐かしの昭和。
前略 行雲より。
本日の熊谷は暑い。
正確な気温はわからないが、ゆうに35度は越えているだろう。
節電の夏なので、エアコンの温度設定は29度+扇風機でしのいでいる。
窓外にすだれ、よしずなんかを置いて、直射日光を防ぐとだいぶ違う。
場合によっては、雨戸を一部閉めてもいいくらいだろう。
テレビはオリンピックの話題で持ちきりだ。
女子柔道は金メダルを獲得した。
男子柔道はなかなか金メダルに手が届かないが、
銀や銅では選手、コーチ陣ともに納得しないようだ。
世界1位でないとだめ。
2位や3位じゃ意味がないとは、お家芸柔道、なかなかシビアな世界である。
さて、今回の写真は「三丁目の夕日 傑作集」コミックである。
もともと漫画は学生の頃よく読んでいたのだが、
仕事をするようになってからはめっきり読まなくなっていた。
少し前の映画で「三丁目の夕日」を見て原作を読みたくなり、
久々に手にとってみた。
映画では、自動車修理の鈴木オート家族や
小説家志望の茶川さんなどが主人公になり話が進んでいくが、
原作では特に主人公っぽい人は出てこない。
一話読み切りになっているので、その回ごとに登場人物が違う設定だ。
内容はどうってことのない日常の風景なのだが、
これが読み始めるとハマってしまう。
時代は昭和30年代くらいだろうか。
こてこての昭和の風景をバックに話はすすんでいく。
我々は新人類と呼ばれた世代だが、
ところどころ「あ~、こんなのあったよな。」と、ほのぼのとした気持ちになる。
テレビがガチャガチャのチャンネル式だったり、
洗濯機が2槽式で脱水にローラーを使ってたりなんぞは、
子供の頃のかすかな記憶が思い出される。
道路は舗装道路より砂利や土だらけの道が多く、
歩行中に車が通ると土ぼこりがすごかった。
大型スーパーなどはほとんど無く、
漫画に出てくるような小さな個人店がいわゆる商店街を形成していて、
近所の人はそこで日用品を買っていた。
家の近くだと箱田通り沿いが商店街だったのだが、
幹線道路が1本増えただけで人の流れが変わってしまい、
大型スーパーにも押されてめっきり静かになってしまった。
時代の流れと言ってしまえばそれまでだが、何とかならんものかとも思う。
我々男性は目的買いが多いので、あの店の「これ」を買いに行くのだが、
買い物の主役である女性は、いろんなものを見ながら買わないこともできる。
そのため、少量を並べた個人店よりも、
品揃えの豊富なスーパーやデパートの方が行きやすいのだろう。
駐車場が大きく、運転の不得手な女性にも行きやすいってのもあるのかも知れない。
ちなみに男性はデパートでブラブラするってのはなかなかできない。
奥さんのつき合いでついて行く殿方は見かけるが、
男同士でデパートをブラブラしている人を見たことがあるだろうか。
そのくらい、目的の無い買い物が苦手な人種なのだ。
私もごくたまーにスーパーに行くが、非常に居心地が悪い。
ここは男の来る場所ではないなと本能的に思ってしまう。
ちょっと高くても、近所の商店やコンビニで買ってしまうのが男性心理だろう。
こうしてみると大型スーパーやデパートの台頭というのは必然なのかも知れない。
さて、三丁目の夕日。
ついこないだの映画では昭和40年代にスポットをあてたようだが、
そうなると次は昭和50年代だろうか。
で、60年代までいったら、10年代、一桁へと戻るのだろうか。
大正、明治時代まで戻ったら、だれも懐古主義にひたれないが、
それもまた見てみたい気もする。
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2012年6月29日(金)
愛しの柿ピー。
前略 行雲より。
本日の熊谷の日中は梅雨時にもかかわらずほぼ快晴。
久しぶりに暑くなり、半袖Tシャツ+扇風機が大活躍している。
庭の野菜たちも太陽の光を満喫して、すくすくと育っている。
プチトマトはほぼ成功。キュウリもそこそこ。なすも良し。
ピーマンとメロンが今一つといったところだ。
ピーマンは日当たりが悪い場所に植えたので仕方がない。
全体的には、概ね5勝2敗で勝ち越したので良しとしよう。
失敗を反省し、次の勝利へと結び付ける。
野菜作りもスポーツ感覚で挑めば、これまた楽しめる。
さて、今回のテーマは「柿ピー」である。
最近、柿ピーにはまっている。
仕事が一段落した夕方時に、袋から柿ピーを取りだし、
ボーとしながらポリポリと食べる。
庭を見たり、パソコンをいじったりしながら食べるのだが、
タバコを吸わない私にとって、息抜き&至福タイムになりつつある。
つい先日、また柿ピータイムを楽しもうと思ったら、なんと袋の中はからっぽ。
こりゃいかんと、近所のセブンイレブンまで自転車を飛ばした。
店内に入りお菓子コーナーに行って、お目当ての柿ピーを探すのだが見つからない。
私のお気に入りはオレンジの袋、そう亀田製菓の柿ピーなのだ。
天下のセブンイレブンともあろうものが柿ピーを置いてないのかと思いきや、
お菓子コーナーではなく、おつまみコーナーにありました。
ところが、この柿ピー、袋の色が白&透明ではありませんか。
亀田製菓もんじゃないなと、裏面をチェック。
ところがなんとそこに亀田製菓の文字を発見。
亀田さんて白袋バージョンも出してるんだと一人納得。
早速レジにて購入する。
家に帰宅して大袋を開けて、中の小袋を取り出す。
いつもと色が違うので、なんとなく違和感を感じながら食してみる。
んーん、なんか違うなと。いつもの味ではないぞと。
なんでやねんと柿ピーそのものをよーく観察してみると、
ピーナッツと柿の種の配合が違うことに気がついた。
いつものオレンジ袋は柿の種が多し。
素人判断だが、柿の種7対ピーナッツ3位の割合だろうか。
一方、今回の白袋バージョンは5対5位の割合で、
いつもよりピーナッツが多く入っている。
これはなぜかと。
またまた素人判断だが、
おつまみコーナーにある白袋バージョンは
酒飲みのつまみとして作られたものなので、
大人の酒飲み用としてピーナッツを多目に入れているのではないかと。
しかもそのピーナッツもいつものより若干硬めのような気もする。
歯応え重視なのか。
もう一度袋裏面を確認すると、お問い合わせ先は亀田製菓だが、
商品開発はセブンイレブンホールディングスグループになっている。
設計はセブンで工場は亀田って感じだろうか。
どうりで、いつもの柿ピーと違う訳だと一人納得。
しかし、これではいかん。
いつもの至福の一時が味わえないではないかと、
自転車を繰り出し再度別のコンビニへ。
お目当ての柿ピーを探したら、いつものオレンジの袋を発見。
しかし、袋の絵柄にいつもの活気が無い。
知っている人にはわかるだろうが、
例の「けなげ組」のワンポイント絵柄がないのだ。
一見どうでもよさそうな「けなげ組」。
世の中の役に立ってなさそうで、
実はけなげに役に立っている品々を集めたマンガ集みたいなものだ。
あれを読みながらポリポリすることに至福の喜びを感じる私にとって、
「けなげ組」が無いってのは、クリープを入れないコーヒーみたいなものである。
んーん、とりあえず今回は見た目ではなく、中身の味で勝負することにしよう。
と思いつつ、一応、袋の裏面をチェック。
ところが、こいつも亀田製菓ものだった。
亀田さんて、いろんなバージョンをだしているのかと、また一人納得。
早速購入して中身を食してみる。
柿の種7、ピーナッツ3の絶妙なバランス。
口の中でポリっとくずれるピーナッツのやわらかさ。
これこれ、この味を待ってたのよと、
夕日を見つめながら独り静かに至福タイムを満喫した。
仕上げにウーロン茶を流し込んで、本日の柿ピータイムの終了だ。
さて、もう一仕事すっかと、練り板を取りだし、土練りの準備を始める。
柿ピーの空袋が、西の空からのぞいているお日様にそっと包まれていた。
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2012年5月31日(木)
その時 人は・・・。
前略 行雲より。
本日の熊谷は午前中は快晴。
昨日は午後から嵐のような天気になったが、
今日の予報も同じようなものなので、布団を干すわけにはいかない。
仕方なしに洗濯ものを干して、「いつでも雨よ来い」の態勢を整えている。
庭先に植えた野菜たちも元気に育って、
プチトマトなんかは小さいながらも実を付け始めている。
雨が降る度に植物は成長する。
人間にとっては多少面倒な雨も、植物にとっては、まさに恵みの雨なのだろう。
今回はキュウリ、なす、プチトマト、ピーマン、メロンと5種類の野菜を植えてみたが、
今のところ各野菜とも枯れることなく、みんな根を張って元気に育っている。
2年前にナス科の野菜を植えた所なので、
連作を避けるために、プチトマトなんかはプランター栽培で育てている。
プランターだと野菜用の土をたっぷりと入れられるので便利だ。
やはり栄養満点の土なので、実の付くのも一番早かったのだろう。
この辺はやきものと同じで、やはりいい土はいい作品を作ってくれる。
もしかしたら園芸と陶芸の原点は同じなのかも知れない。
さて今回の写真はこれだ。
小説「蜩ノ記」である。
ひょんな事からこの本を見つけ、
直木賞受賞作とのことで何気なく手にとってみた。
まず表紙の挿し絵が気に入ってしまった。
墨絵で描いているのだろうか。
表と背表紙を広げると一枚の絵になるのだが、
障子の手前で人物が何やら書き物をしている。
外からは草木の影が障子にうっすらと写し出しされて、
田舎にある落ち着いた佇まいの雰囲気を感じさせてくれる。
真に時代小説にぴったりの画風ではないか。
長編だが腰を落ち着けて読んでみるかと、その気にさせてくれた。
おおまかな内容はこうだ。
元奉行所の役人であった戸田秋谷は、
かつて藩主の側室と不義密通を行ったとの罪で、
家譜編纂の後、10年後の切腹を命じられていた。
監視役に庄三郎という男が付くが、秋谷との日々を送るうちに、
公明正大な秋谷が不義密通を働くなどあり得ないこと確信する。
命に期限を付けられた者がどう生きていくのか。
武士の誇りとは何なのか。
それらをテーマに小説は進んでいく。
読後感・・・。
「淡々と生き抜いていく」の一言に尽きる。
淡々と粛々と、日々与えられた仕事や雑事をこなし、
やがて来るべき時をむかえる。
特に最終章の切腹の日に、
妻との最後の一服の茶を喫するシーンは心に染みる。
最期をむかえる侍とはかくあるべきと、本書は私に語りかけてくる。
涙なしには読み切れない、久々の名著だった。